2024年5月、ゴールデンウィークに甲斐駒ヶ岳に登った。
【注意喚起】
— 花谷 泰広 (@hana1976) 2024年5月3日
小屋番からの報告があり、花谷のアカウントからも注意喚起をさせていただきます。
YAMAP等の登山SNSにて、「ピッケルやアイゼンを使用せずに登頂できた!」等の投稿を見て、ピッケルやアイゼンなし、さらにはピッケルを使用するのが初めて、という方が複数見受けられるようです。(続く) pic.twitter.com/EJFSAjvNb2
2024年の残雪期甲斐駒ヶ岳が実際どうだったか、 一般登山者の目線で記録する。
1.行程概要
・日程
2024/5/3-4
・経路
5/3:竹宇駒ヶ岳神社→七丈小屋泊
・パーティ
30代男性3名
・持ち物
・標高差など
ジオグラフィカのまとめ画像のとおり
大変だった!!!!!
2.事前準備〜5/2前日キャンプ
甲斐駒行きを決めたのは4月頭だった。 会社の元後輩K君と3年ぶりに山へ行こうぜと話していた。 まずは北アルプスを検討したが、 例年人が多く今年は大きな雪崩も起きていたのでボツに。
自ずとコースは黒戸尾根経由となる。事前のリサーチでは、 雪の量は例年より少ないものの、 小屋の裏から嫌な積もり方をしている様子だった。
登れそうか現地で見て決めましょう、とK君と合意し、 最近韓国から帰ってきた元後輩S君を引き込み3人で登ることにし た。
3.5/3 七丈小屋まで登る
朝8時、私達は尾白川渓谷駐車場にいた。 コースタイム的に7時間あれば小屋に着いているだろうと考え、 この時間から登り始めた。この日は気持ちの良い快晴で、 川の流れを感じながら林の中を歩くのは爽快だった。
長い吊り橋を渡ると、いよいよ登山開始。早速急な坂で、 黒戸尾根の洗礼を浴びた。
因みに靴はLOWAの冬用ブーツ。 初日は重たいばかりで強みを活かせる場面はなく、 重ねて大変だった。
そのうちフラットな道となり一息ついた。 しばらく山腹を横に移動すると、再び急坂が始まった。 黒戸尾根はこういったメリハリがしばしばあった。 道自体は歩きづらい箇所は無く、 むしろ気持ち良い瞬間も多かった。
標高1,628mの表示がある辺りで休憩した。 地図にはここから「長い急坂」とある。5月といえど既に汗だく。 長丁場なので、水・塩飴・カロリーを意識的に摂った。 アミノバイタル「ガッツギア」、 非常に美味しかったので永遠のスポーツキッズの皆さんにオススメ です。
刃渡りを越えてハシゴなどを乗り越えるとフラットな道に入った。 黒戸山山頂を巻いているようだ。 合間に富士山が見える場所があり、気持ちよく休憩できた。
更に進むと、なんと下り始めた。せっかく標高をあげたのに… とボヤきながら歩いていると、突如巨大な壁が現れた。 これが甲斐駒ヶ岳か…!と圧倒された。 五合目は甲斐駒ヶ岳の全容がよく見える開けた場所になっていたの で、しっかり休憩を取った。
ここから更に下り五合目小屋跡までつくと、 巨大な岩の右にはしごが見えた。ここから再び登りになるらしい。

えっちらおっちら歩き続けると、40分後に小屋が見えた。 12時45分、七丈小屋に到着。本当にお疲れ様でした。 小屋までは雪は無かったが、 一部氷が土と同化していたのでスリップには要注意。
4.5/3 七丈小屋で遠くの友達と酒を飲む
七丈小屋の呼び鈴を押すと、 小屋番のお姉さんが出てきて諸々案内してくれた。 トイレは七丈小屋より30m奥と言われたので、 先にお手洗いを済ませて小屋に入る。
小屋は小ぢんまりとした造りである。一階は談話室 兼 食堂 兼 乾燥室で、二階が寝床となっている。 寝床は横一列に並ぶ形で12名程度就寝可能。 横とはシートで区切られておりプライベート感があった。
予めナンバーが指定されており、テーブル、寝床、 靴箱は同じ番号で管理されている。 この日はいっぱいの12名程度が宿泊していたが、 不思議と手狭感はなかった。
また、水も1人2リットルまでは補給可だった。 買うしかないと思っていたので助かった。
ついて早速昼食を摂った。一階で火を使ってよいのは助かる。 同時にK君がビールを3本買ってきてくれたので、 早速飲んで労をねぎらった。S君は山小屋に泊まるのが初めて※ ということで、大層楽しそうにしていた。 気付いたら3本くらいビールが空いていてギョッとした。
※山岳部や山岳会での山行や沢登りが主活動のS君の環境だと、 山小屋に泊まるハードルが非常に高いそうだ。
更に七丈小屋には日本酒が五種類もある。この日は山梨の地酒、 七賢を一つは熱燗、一つは冷で楽しんだ。 特に冷の方は小屋番のお姉さんがグラス in 枡に並々注いでくれて最高だった。
K君、S君とたまたま近くにいた方と4人で延々話していた。 数年空いても、変わらず話せることにちょっと嬉しくなった。
途中、ふらっと外に出て涼んでいた。 トイレの奥にある第二七丈小屋のテラスからは鳳凰三山と富士山が ドンと見えた。左下には韮崎あたりの街並みがあり、 夜はキレイな夜景が見えて嬉しくなった。 七丈小屋を出て左にはベンチの置かれたテラスがあり、 北アルプスなどがよく見えた。しばらくここで日向ぼっこをし、 また酒を飲んで喋っているとあっという間に午後5時、 夕食の時間になった。夕食はカレー。 おかわりし放題で大変美味しかった。
夕食の前に、 小屋番のお姉さんから甲斐駒ヶ岳山頂までのルートに関するアナウ ンスがあった。内容は花谷氏のSNSにも記載の事柄と、「 山頂までの雪が溶けると非常に歩きづらくなるので早めに行くこと 」という内容だった。
とりあえず3時に起きることとし、午後7〜8時に就寝した。 夜は予想外に暑くて寝苦しさを感じた。
5.5/4 甲斐駒ヶ岳登頂、そして下山
★以降の写真は以下URLをご参照ください。
翌朝は3時過ぎに起床し、荷物をまとめて一階で朝食を食べた。 朝食は小屋が前日夜に用意してくれたいなり寿司三つ。 いなり寿司は大好物である。 味もボリュームも満足であっという間に食べ終わってしまった。
この間に他の宿泊者は続々と出発していた。 外がやや明るくなった4時半に出発した私達が一番最後であった。
雪は状態が微妙に悪く、 気を抜くと足がズボッとハマってしまいそうだった。 一方で夏道は雪と岩が混在していて総じて歩きづらい。 途中で日の出を迎えた。 美しい光景に盛り上がった気持ちをそのままに、頑張って登った。
ここから先はしばらく岩登りが続く。 アイゼンをつけながら岩をよじ登るのは一苦労だった。 更に途中で2箇所ほど、 長い谷を横切る形で雪道を通る必要があった。 ここ落ちたら終わりだな…と話しながら慎重に歩いた。
振り向くと二本の剣が陽の光に照らされていた。 てっきり山頂に刺さっていると思っていたので、 思わぬ光景に疲れが吹き飛んだ。 道中にも沢山の剣や石仏があった。昔の人も、 同じ景色を見て同じような思いをしてきたのだろうか。
山頂手前のピークを越え、朝6時19分登頂。

山頂近くの雪や岩は、下りのほうが危なく感じた。 アイゼンを引っ掛けないよう慎重に進んだ。
テント場裏からダラダラ続いていた雪面は、 降りる頃には柔らかくなっており大変歩きづらかった。 いつ踏み抜いてもおかしくなかったので、 枝の間をくぐり抜けトレースを参考に歩いた。 7時位にこのコンディションだと、 この後の時間はもっと歩きづらいだろう。 小屋番のお姉さんが早出を促して理由がよく分かった。
朝7時半に七丈小屋へ到着した。小屋の中で荷物整理し、 後ろ髪を引かれる思いで朝8時に出発した。
この後は一時間に一回休憩して黙々と下る。 よくこんなに登ってきたな、と自分で自分を褒めていた。 標高が下がるほどジリジリと暑くなり汗が止まらなくなったので、 水と塩飴を適時摂取し乗り切った。
朝10:50に駐車場へ到着し、 無事怪我なく下り切ることができた。大変お疲れさまでした。
6.その後
帰りは近くの浴場で2日ぶりの風呂に入りリフレッシュしてから、 小淵沢近くの定食屋で飯を食べ解散した。
冬靴で長く下ったため、両足にマメができた。 また左足の人差し指が痛むな〜 と思ったら爪の中が青黒くなっていた。靴の中でぶつかり続け、 内出血したらしい。急いで下るもんじゃないと思った。 マメは放っておいたら治った。
くたくたになる山は大変だが、 やりがいと達成感はその分大きかった。 チャレンジを止めないようにしようと思った。
7.ヤマケイオンライン読者レポーターになった
Webで募集していたので申し込んだところ、 お眼鏡にかなったようで甲斐駒ヶ岳の記事を掲載していただいた。(以下です)
やってきたことが認められたような気持ちになり、 正直とても嬉しい。
ただ文字数の関係でこの内容全部を入れることはできなかったため 、ディレクターズカット版として残しておく。